奨学金返還支援に係る経費の判断基準

奨学金返還支援に係る経費の判断基準

2024年7月29日 | We willグループ

社会保険労務士法人We will労務事務局です。
連日、厳しい暑さが続いておりますが
皆様におかれましては日々ご盛栄のことと存じます。

さて、本日は、従業員が入社する前の学生時代に貸与を受けていた奨学金
(日本学生支援機構(JASSO)による奨学金)を
企業等が支払う場合の経費の判断基準についてご案内いたします。

令和5年6月、健康保険法の事務連絡にて
この奨学金返還支援に係る経費の判断基準が示されました。
比較的新しく、社会的認知度はまだ低い制度ですので、
この機会にお見知りおきいただけたらと思います。

奨学金返還支援に係る経費は、
企業等の支払方法により、経費となるか人件費となるかが異なります。

支払パターン①:
企業等が「奨学金返還支援(代理返還)」を利用して、
給与とは別に返還金を直接日本学生支援機構に送金する場合
→当該返還金が奨学金の返済に充てられることが明らかであり、
被保険者の通常の生計に充てられるものではないことから
「報酬」等に該当しない
(「福利厚生費」等になり所得税等が非課税となる)

※なお、給与規程等に基づき、企業等が
給与に代えて直接返還金を日本学生機構に送金する場合は、
労働の対償である給与の代替措置に過ぎず
「報酬」等に該当する
(「給与」等になり、所得税等が課税となる)

支払パターン②:
企業等が奨学金の返還金を従業員に支給する場合
→当該返還金が奨学金の返済に充てられることが明らかではないため
「報酬」等に該当する
(「給与」等になり、所得税等が課税となる)

(参照:JASSO(独立行政法人日本学生支援機構)
https://www.jasso.go.jp/shogakukin/kigyoshien/__icsFiles/afieldfile/2024/07/03/dairihenkan_scheme.pdf)

このように、
・企業等が直接日本学生支援機構に送金するか否か
・給与規定等に定めているか否か
によって、経費となるのか人件費となるのかが異なります。
そして、所得税等の課税対象となり、
社会保険料等の算定対象の報酬になるのか否かが異なります。

上記支払パターン①のように、
企業等が「奨学金返還支援(代理返還)」を利用して、
給与とは別に直接、返還金を
日本学生支援機構に送金するメリットとしては
下記等があげられます。

◆会社も従業員も各種税金や社会保険料の負担が軽減される
◆採用活動で福利厚生をPRできる
◆優秀な若手人材の確保や離職率の低下につながる

日本学生支援機構の調査によると、今や大学生・大学院生の約半数が
奨学金制度を利用しているとのデータがあります。
従業員が奨学金の返済への不安を気にせず、
浮いたお金を自己啓発等に使うことができれば、
仕事のモチベーションや能力アップにもつながる可能性があります。

先日には令和6年度の地域別最低賃金額の改定の目安も公表され、
賃上げの動きがますます高まる中、
社会保険料の負担、定期昇給等、
企業等のお悩みは日々尽きないことと存じます。

「奨学金返還支援(代理返還)」制度等を活用し、
経営や、人手不足解消・人材定着等を促す新たな一手として
お役立ていただけましたら幸いです。

(参照:奨学金返還支援(代理返還))
https://dairihenkan.jasso.go.jp/

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