社会保険労務士法人Wewill 労務事務局です。
朝の空気がすっかり冬ですね。
さて、今週も変形労働時間制についてお届け致します。
変形労働時間制を適用し、複数のシフトパターンにより労働させているケースがありますが、就業規則にすべてのシフトパターンが記載されていなかったとして、変形労働時間制が無効となった裁判例がでています。
この裁判例は、大手M社のもので、名古屋高裁は、変形労働時間制は無効として、未払い賃金約61万円の支払いを命じています。
M社では、1か月単位で勤務シフトが変わる変形労働時間制を採用していて、また同社の店舗数は全国864店舗と非常に多く、各店舗でシフトが異なるため就業規則でその全てのシフトについては記載がなされておりませんでした。
これに対し名古屋地裁は、就業規則で定めていない店舗独自の勤務シフトは労働基準法の要件を満たしておらず無効とし、事業規模によって例外が認められるものではないとしました。
会社側は全店舗864店舗に共通するシフトを設定することは不可能であり、各店舗のシフトは就業規則に準じていると反論していましたが、上告を断念し、今年の7月11日、名古屋高裁判決が確定しました。
店舗や事業場ごとにシフトを変える場合は全てのシフトを就業規則等で定める必要があり、定まっていない場合は無効となります。
それにより、M社では就業規則に記載する勤務シフトを4種類から約200種類に増やしています。
この判例からもそうですが、変形労働時間制は、変形期間を平均し週40時間の範囲内であっても、使用者が業務の都合によって労働時間を変更することはできず、所定労働時間は、あらかじめ定めておくところになります。
万が一のトラブルに備えて、厳格運用し、シフトパターンをすべて載せておくことをおすすめ致します。